町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。
今回は、自社で内製した生産設備に、外部ブレーンの力を借りて、IoTの仕組みを取り入れた事例を紹介します。
外部ブレーンの力を借りてIoTを導入
背景
熊本県にある九州オルガン針株式会社は、従業員数129名の企業で、ミシン針の製造などを手がけています。
同社は、工業用ミシン針の市場において、グループ全体で世界トップシェアを占めています。
しかし、ミシン針の市場は、家庭でのミシン利用機会の減少や、国内の縫製業低迷などを背景に、2004年にピークアウトしています。市場そのものが縮小傾向にある中では、トップシェアといえども安閑とはおられず、同社では、競争力を高めるために、完成品検査の強化を図っています。
1日に約70万本も製造するミシン針を、20数人の検査担当者が、全て目視で検査している他、針の曲がりを自動的に検出して矯正する機械も内製して運用しています。この機械(矯正機)は、針を回転させ、そこにレーザー光を当てることで曲がりを検出し、曲がっている部分を上からハンマーで叩いて矯正するものです。
工場には矯正機が約100台並べられていますが、叩き続ける矯正機は、故障による停止が避けられません。停止時にはパトライトを点灯させアラートしていましたが、それだけではどの矯正機が停止したのかすぐには分からず、止まっている機械を探し出し、原因を見つけて対処する必要がありました。
取り組み内容
そのため同社では、矯正機をIoTでつなげて稼働情報を見える化しました。具体的には、PLC(programmable logic controller:機器の動きなどを制御するコントローラ)を介して、すべての矯正機の稼働情報をひとつのモニターに表示することで、止まった機械をすぐに特定できるようにしました。
さらに、この取り組みにより、矯正機の稼働情報だけではなく、機械毎の良品率も見えるようになりました。良品率が低い機械は、故障が近いことが予想され、そうした機械を優先的にメンテナンスすることで、全体の稼働率を高められるようになりました。
しかし、針の不良は曲がりだけではなく、不良の種類は全部で33にも及びます。それらの不良は、検査担当者が目視で検査しています。
同社では、それらの不良についても、AIを用いて検査を自動化できないか検討中です。将来的には、AIで作った判定システムを外観検査装置に導入し、実際の検査業務に生かしていくことを目指しています。
ポイント
- 社長自身がIoTやAIの活用に積極的だった点
- 生産技術部門が生産設備を内製しており、自社設備に精通していた点
- 外部ブレーンの力を借りることができた点
同社では、社長がIoT導入に意欲的だったため、スムーズに導入が開始できました。また、生産設備に精通した社内技術者と、IoTやAIに精通した外部団体「熊本AIコミュニティ」がタッグを組むことで、ここまで高度なシステムを開発することができました。
IoTやAIについては、ユーザーだけでなくベンダーもまだ手探り状態であり、自治体などもIoTやAIの支援体制を充実させています。これらの支援を活用することで、低コストでIoT導入の取り組みを行うことができるかもしれません。
当社の簡易IoTシステムには、AIまでは取り入れていませんが、民生用の市販品を使った簡単なシステムであり、低価格でIoTを導入できます。
当社の簡易IoTシステムは導入も非常に簡単なので、まずは一度導入してみて、IoTの本質や有効性を理解した上で、業務改善の取り組みを、より深く進めていくのも良いのではないでしょうか?
(簡易IoTシステムについては こちら へ)
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(出典)
- 日経BP総研「ものづくり未来図」