中小製造業のIoT事例 15 〜「アイガモロボ」で除草の負担を軽減

町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。

今回は、農業分野でのIoT取り組み事例として、日産自動車の技術者がボランティアで開発した「アイガモロボ」を紹介します。


「アイガモロボ」で除草の負担を軽減

背景

減農薬でコメ作りをしようとすると、田植えの後の1ヶ月程度、頻繁に雑草を抜く必要があり、農家の方々にとっては大きな負担になっています。

これに対し、「アイガモ農法」という減農薬の取り組みがあります。
田んぼにアイガモを放し、

  • アイガモが泳ぐことで水を濁らせ、その下から生えてくる雑草に光合成をさせない環境を作る
  • アイガモが生えてきた雑草を食べる

ことにより、農薬等がなくても除草できる手法です。

一方、アイガモ農法においては、「アイガモの外敵の侵入防止に電柵や防鳥糸などの設置が必要」、「アイガモが成長すると稲を食べてしまったりする」など、いくつかの課題もあります。

取り組み内容

これに対し、日産自動車の技術者が、ロボットでアイガモ農法と同等のことをできないかと考え、ボランティアで「アイガモロボ」を開発しました。

「アイガモロボ」は、田んぼの水面を走行する際に水を濁らせることにより、雑草が光合成しにくくなる環境を作り、雑草が生えるのを抑制します。
開発においては、「軽くて使い方が簡単であること」、「メンテナンスが容易であること」、「雨風に耐えられ耐久性が高いこと」、「アイガモ農法と同等のコストで導入できること」、「エコエネルギーで永続的に動くこと」を目指しました。

仕組みとしては、田んぼに設置されたWi-Fiと、「アイガモロボ」に搭載されたGPSを使って、「アイガモロボ」の位置を認識し、田んぼの中をくまなく回るようにしています。
Wi-Fiを使って、基点からの位置情報をやり取りすることで、「アイガモロボ」の進路を調整し、適切に田んぼの中を自動運転させることができます。

また、「アイガモロボ」には螺旋状のスクリューが搭載されていて、「稲を引き抜くことなく水面を進む」、「水中の泥を巻き上げ水を濁らせる」、「モーターとバッテリーを冷却する」役割を果たしています。

その他、「アイガモロボ」には充電式バッテリーが積んでありますが、田んぼの横にはソーラーの充電小屋が設置してあり、そこから電気を充電します。
自然エネルギーを使って除草するというのが「アイガモロボ」のコンセプトです。

ポイント

  • 親しみを持ってもらえるデザインを追求した点
  • 農業人口が劇的に減る可能性がある中で、技術を活かして、農業の維持に貢献しようとしている点

この事例のように、IoTは、さまざまな分野でさまざまな課題を解決できる可能性を持っています。
ただし、IoTをうまく活用するためには、まずは当事者が、課題や対応策(田植え後の除草作業が大変であることや、田んぼの水を濁らせることが雑草対策に有効であること)を明確化し、その上で、技術者と共に具体的な解決策(スクリューを搭載したロボットに、水田内を自動走行させる)を見つけていく必要があります。

また、技術者自身も、視野を広く持ち、さまざまな分野に興味を持つことが重要です。

 

(出典)

  • FNN PRIME「『お掃除ロボみたい!』田んぼで役立つ”アイガモロボ”を日産の技術者が開発したワケ」
  • Youtube「日産自動車の技術者によるボランティア活動から生まれた『アイガモロボ』始動!」