私は、小中学生にプログラミングなどを教えるボランティアグループのメンバーになっています。
このグループでは今年度、小中学生に電子回路とマイクロビットプログラミングを教える、通年制のワークショップを実施してきました。
月1回のペースで合計9回実施し、「電子回路」「プログラミング」について、それぞれ数回の講義を行った他、そこで得られた知識を使って、各自に自由に作品をつくってもらいました。
先日、全てのカリキュラムが終了し、「成果発表会」を開催しました。
発表会の場では、生徒の皆さんがプレゼン資料なども準備し、自分の作った作品を紹介しました。
その場で、改めて生徒の皆さんがつくった作品を見た訳ですが、当初、私たちが想像していたよりも、ずっとすばらしい作品ができあがっていました。
あまりにもすばらしくて、ちょっとビックリしてしまったので、ここで概要を紹介しようと思います。
マイクロビットロボカー
講師陣より、作例として「マイクロビットロボカー」を紹介したのですが、そのロボカーを使って、「小学生ロボコン2021」と同じルールの競技に取り組みました。
コース上の障害物を避けながら、スポンジをスタートからゴールまで運ぶものです。
コース自体も自作しているのですが、コースが滑りやすく、同じプログラムでも動かすたびに挙動が変わってしまうとのことで、コースにマスキングテープを貼ったり、ロボカーのタイヤに輪ゴムを巻いたりと、滑りにくくするためにいろいろな工夫をしています。
エレベーター
マイクロビットで操作するエレベータです。
Aボタンを押すと1階あがり、Bボタンを押すと1階さがります。
動いている間はLEDディスプレイに矢印が表示され、止まるときには音もなります。
マイクロビットにモータードライバをつないで、それでモーターを制御しています。
ギヤ比の大きいギヤを選んだり、糸まきを使ったりして、エレベータがゆっくり動くように工夫しています。
いぬなでなで
講師陣より、作例として「もぐらたたきゲーム」を紹介したのですが、たたくのはかわいそうとのことで、動物を「なでなで」するゲームに改良しました。
LEDディスプレイに表示されている顔と同じ顔が描かれているふだをなでなでします。
なでなでできた回数により、点数が決まります。点数によって異なる音楽が鳴るようにしています。
ふだをなでたときに、きちんと反応するようにするところが難しく、自分でも、まだ満点が取れたことはないそうです。
庭の花を救うプロジェクト 自動水やり機
別のワークショップに参加したときに入手した「鉱山探索ロボット」を流用して、花に水をやる装置をつくりました。
ロボットの上面にはコップが設置されています。
ロボットをスタートさせると、花の場所まで進み、そこでコップを傾けて、花に水をやります。
モーターの回転運動をコップを傾ける動きに変えるところなど、非常に工夫されています。
マイクロビットで3個のモーターを制御しているため、部品点数も多くなり、配線などに苦労したそうです。
ダンスロボット
マイクロビットで4個のサーボモーターを制御し、2本の腕が動くダンスロボットをつくりました。
腕の肩とひじの部分にサーボモーターを取り付けることで、腕を前に出したりひじを曲げたりすることができます。
ロボット用とは別に、もう1台マイクロビットを用意し、そちらにはダンスミュージックを打ち込んでいます。数分にわたる超大作です。
ロボットが、音楽にあわせてダンスします。
サーボモーターを腕に取り付けるところや、それをマイクロビットで制御するところに苦労したそうです。
石焼き芋ロボカー
講師陣より、作例として「マイクロビットロボカー」を紹介したのですが、そのロボカーにデコレーションして、「石焼き芋ロボカー」にしました。
マイクロビットのボタンを押すと、ロボカーがプログラムどおりに走り、目的地に着くと「いしやきいも〜」のメロディーが流れます。
プラダンなどを使って、とてもきれいな軽トラの形をつくっています。
「いしやきいも〜」のメロディーをきちんと鳴らすところを頑張ったそうです。
ぺんぎん豆腐
「マイクロビットロボカー」をデコレーションして、「豆腐売り」のトラックにしました。
先ほどの「石焼き芋ロボカー」をつくった生徒とは友達同士で、何をつくるか、ふたりで相談して決めたようです。
マイクロビットの制御で、トラックがプログラミングされたとおりに走り、止まると豆腐売りのラッパのメロディーが流れます。
木材やブロックを活用して、きれいなトラックの形に仕上げています。
ブロックで荷台をつくるところが難しかったそうです。
二足歩行ロボット「ロボボ」
マイクロビットで4個のサーボモータを制御し、二足歩行するロボットをつくりました。
いったんはきちんと動いても、ロボットに飾り付けなどをしてバランスが少し変わってしまうと片足で立たなくなるなど、調整がなかなか難しかったため、「ゼンマイロボット」の足を参考にして、足のうらを「コ」の字型にし、転ばないようにしています。
足のうらの形を改良する際には、つまようじを使い、強度を確保しました。
ハンディ扇風機 回転台
ハンディ扇風機を、マイクロビットの操作で首振りさせたり、首振り角度を変更したりするための回転台です。
台の上にハンディ扇風機を設置します。
2台のマイクロビットを準備し、送信機と受信機にします。
送信機のボタンを押すと、その命令が無線で受信機に送られ、台を首振りさせたり、その角度を変更したりできます。
ときどき動かなくなることがあるため、リセットボタンを追加するなど、さまざまな工夫がされています。
リサとガスパールの旗上げ人形
マイクロビットでサーボモーターを制御することで、リサとガスパールが旗を上げ下げします。
マイクロビット2台で無線通信し、送信機のボタンを押すことで旗の上げ下げができます。
LEDやスピーカーも取り付け、動作時にはLEDが光ったり音が鳴ったりするようにしています。
プログラムをつくる際には、他のいろいろなプラグラムへも応用がしやすいように、基本動作部分のプログラミングを工夫しています。
また、部品点数が非常に多いため、配線が煩雑になってしまいますが、「はんだづけ実習」で習った知識を使い、グランド配線をひとまとめにする配線パーツをつくったりして、スッキリと配線できるようにしています。
マイクロビットで玄関監視装置
マイクロビット2台で通信します。1台(【A】)は玄関ドアに取り付け、もう1台(【B】)は室内に置いておくことを想定しています。
【A】には人感センサが付いています。扉があいたり(加速度センサ)人を検知したり(人感センサ)すると、【B】にその旨表示されます。
同時に、【A】では、暗証番号(A、Bボタンを押す順番の組み合わせ。「B」→「B」→「A」など)の入力が求められます。
暗証番号があっているか間違っているかが【B】に表示されます。
【B】のボタン操作で、【A】のプログラムを起動したり停止したりできます。
暗証番号を認証する仕組みなど、プログラム内でさまざまな工夫がされています。
小学生ロボコンに挑戦!
「小学生ロボコン2021-22」に出場しました。
小学生ロボコンでは、マイクロビットではなく、「ココロキット」というデバイスをつかってロボットをつくります。また、プログラム作成には「kurikit」という開発環境を使います。
スタートゾーンでロボットにスポンジを積み、コース上の障害物(鉛筆)を避けながら、スポンジをゴールまで運ぶ競技です。
この競技に、「USBカメラでコース全体を撮影する」「kurikitのビデオモーションセンサー(画像認識)機能で、ロボットが障害物に接近していることを認識する」「ロボットが障害物に接近したら方向転換させる」というしくみのプログラムで出場しました。
画像認識でロボットの動きが制御できるよう工夫されています。
昆虫温度計
ヘラクレスオオカブトの幼虫を育てているため、飼育ケース内の温度を管理するためのシステムをつくりました。
マイクロビットに「防水型温度センサ」をつなぎ、それを飼育ケースの中に設置します。
ケース内の温度が基準よりも高いとき、低いときに、それぞれLEDを点灯させます。
LEDによる表示では、「電子回路講座」でつくった「LED信号機」を活用しました。
実際に飼育ケースに設置しやすいように、工作の部分や配線などをコンパクトにまとめています。
餅つきゲーム
講師陣より、作例として「もぐらたたきゲーム」を紹介したのですが、それを改良して「餅つきゲーム」にしました。
もぐらをたたく動作が餅つきに似ていることから発想したようです。
マイクロビットから合図が出たタイミングで餅をつきます。
餅をついた回数によって、「角餅」→「焼き餅」→「鏡餅」と、できあがる餅が変わります。
段ボール、バネ、クリップ、アルミホイルで、スイッチの部分をつくっていますが、きちんと接触させるところを苦労したようです。
当初、この企画を考えたときには、各自に自由に作品テーマを考えてもらい、それをつくるというのは、ちょっとハードルが高すぎるのではないかと思っていました。
同様の取り組みを行っているワークショップなどでは、みんなが同じものをつくるというケースがほとんどだと思います。
メンバー内で議論し、ほとんどの生徒が作品をつくれないという事態になっても構わないというスタンスで企画をスタートしたのですが、最終的には上記のように、内容もユニークで質も非常に高い作品がたくさんできあがりました。
その内容も、「アイデアがすごいもの」「プログラムがすごいもの」「電子工作がすごいもの」「加工や組み立てがすごいもの」「デザインがすごいもの」と、各自の得意分野が反映されたものになっています。
作品そのものだけでなく、「プレゼン資料がすごい」「発表内容がすごい」など、驚く点がいっぱいでした。
また、今回のワークショップは親子で参加されている方が多く、親子で力を合わせて作品づくりをしているケースも多く見られ、これもとても良いことだと思いました。
発表会の終了後には、「来年度も参加したい」と言いにきた生徒が何人もいて、とても嬉しく感慨深い1日になりました。