工作用モーターの消費電流値

私は、小中学生にプログラミングなどを教えるボランティアグループのメンバーになっています。

このグループでは昨年度より、小学生に電子回路とマイクロビットプログラミングを教える通年制のワークショップを実施しています。
月1回のペースで合計9回実施し、「電子回路」や「プログラミング」についてそれぞれ数回の講義を行う他、そこで得られた知識を使って、各自に自由に作品をつくってもらおうという活動です。

今はちょうど今年度の活動が全て終わり、来年度に向けて何か講義内容を改善できないか、少しずつ考えはじめているところです。

その中でも特に、来年度は電子回路の講義のひとつとして「ソーラーパネル」を扱いたいと思っています。
子供たちと話をしていても、多くの子供はソーラーパネルに興味を持っており、ソーラーパネルを使って工作してみたいという意見も多く挙がっています。
また、私たちのグループは「環境」を意識した活動を目指しているので、そういう面からもソーラーパネルは題材としてうってつけです。

講義内の実習では、ソーラーパネルと何らかの電子部品をつなぎ、ソーラーパネルで発電した電力で電子部品を動作させることになります。
どのような電子部品を使ったら子供たちが喜ぶか、ぼんやりと考えているのですが、可能であればやっぱり「モーター」を動かしたいと思っています。

ただ、「モーター」は電子部品の中でも消費電力が大きく、それなりに大きなソーラーパネルを使わなければ動かすことはできなさそうです。
大きなソーラーパネルを使うと部品代も高くなってしまうので、パネルの発電能力と負荷となる電子部品の消費電力のバランスが肝心になります。

そんな訳で、まずは事前調査として、電子工作で使用するモーターの消費電流値がどのくらいなのか、調べてみようと思います。

以下の4種類のモーターについて調査することとします。

  • FA-130RA:ごく一般的な電子工作用のモーターです。今回は 秋月電子 で販売されているものを使います(通販コード:P-09169)。
  • ギアモーター:工作でよく使われるギア付きのモーターです。ワークショップのモーターの講義でもこのモーターを使っています。同じ形の類似の商品が多数発売されているようですが、今回はアマゾンで購入したものを使います。

  • 小型モーター:「FF-M20VK-DJK」という、共立エレショップ で購入した小型のモーターです(商品コード:F97411)。
  • ソーラーモーター:タミヤから発売されている、ソーラーパネルで動かすのに適したモーターです(商品名:タミヤ ソーラーモーター02)。

モーターは無負荷の状態で、単三型Ni-MH電池2本で動かすこととします。
以前、M5Stack Basicと「INA226PRC」という電流計モジュールを使ってデバイスの消費電流を測定したことがあります(記事は こちら)ので、その方法を使って測定します。
電池ボックスとモーターの間に電流計モジュールを挿入します。電池ボックスのスイッチをオンにするとモーターが回り始め、電流測定もスタートします。これでモーターが回転開始したときの消費電流波形を観測できます。

各モーターに対して、それぞれ2回ずつ測定しました。
結果は以下のとおりです。

小型モーター、ソーラーモーターとも、動作時の消費電流値は30mA程度に収まっています。しかし、小型モーターは小さすぎて用途が限定されそう、またソーラーモーターは価格が若干高いためワークショップで使用するには少々不向きです。

一方、ギアモーターの消費電流値は想定していたよりもかなり小さく、回転開始時は300mA程度でソーラーモーターと同程度、動作中も100mA程度でした。
この程度であれば、適切なソーラーパネルを選択すれば、ソーラーパネルで発電した電力で動かすことができるかもしれません。
ワークショップでは既にこのモーターを使用していますので、ソーラーパネルの追加購入だけでソーラーパネル+モーターの実習ができる可能性があります。

なお、このモーターにはギアが取り付けられていますので、その取り付け具合によって消費電流値が大きく変わってしまう可能性があります。
消費電流値の個体差を確認するため、5個のギアモーターについて、それぞれ2回ずつ消費電流波形を測定しました。
結果は以下のとおりです。

回転開始時の消費電流値は200〜330mA程度、動作時は90〜140mA程度でした。

当初は秋月電子で販売されているこちらのソーラーパネル(通販コード:M-06564)を使えないかと考えていましたが、このパネルは最大負荷電流が65mAで、このモーターを回すには若干能力不足です。

実際に屋外の直射日光の下で試してみましたが、小型モーターとソーラーモーターはいずれもこのソーラーパネルで回ったのに対し、ギアモーターは全く動きませんでした。

今後はこのギアモーターを動かすための、適切なソーラーパネルの検討を進めていきたいと思います。