前項は こちら。
IoTシステムを構築する上では、いくつかの技術要素が必要となります。
ここでは、それぞれの技術要素について、どのようなものがあるか、それぞれの特徴などについて、より具体的に説明します。
IoTの各技術要素について
IoTでは、「デバイス」でさまざまなモノからデータを採取し、そのデータを「ネットワーク」を使って「サーバ」に送り、そこで蓄積・活用します。
また、デバイスは、モノから実際にデータを採取する「センサ」と、採取したデータを処理してネットワークに送る「プロセッサ」で構成されます。
ここでは、これらの各技術要素「デバイス-センサ」「デバイスープロセッサ」「ネットワーク」「サーバ」のそれぞれについて、どのようなものがあるか、それぞれの特徴などについて説明します。
デバイスーセンサ
デジタル出力 | アナログ出力 | デジタル通信 | |
---|---|---|---|
内容 | 取得した情報をデジタル値(0, 1)で出力 | 取得した情報をアナログ値(例:0~1023)で出力 | 取得した情報を規格(I2C, SPIなど)に則った信号に変換して出力 |
特徴 | 簡単 スイッチと同じ | 簡単 中間値も扱える 接続先(プロセッサ)にアナログ端子、もしくは間にAD変換部品が必要 | 高機能 プロセッサのプログラムが若干難しくなる 同一規格の複数のセンサを同じ信号につなぐことができるので、接続先の端子が少ない場合に有効 |
光センサを例にして、さまざまなタイプのセンサを紹介します。
CDSセル | アナログセンサモジュール | I2Cデジタル光センサ | |
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内容 | アナログ出力 光の強さに応じて電気抵抗が変化 | アナログ出力 光の強さに応じて電圧値が変化 | デジタル通信 光の強さをデジタル信号に変換して出力 |
価格(2021年10月現在) | 30円(秋月電子) | 407円(スイッチサイエンス) | 1386円(スイッチサイエンス) |
特徴 | 抵抗値を電圧値(プロセッサで扱えるアナログ値)に変換するための仕組みが必要 | コネクタがついており、対応するデバイス同士ならはんだづけなしで接続可能 | 検出レンジを赤外線、フルスペクトラム、可視光の3つから選択可能 |
例えば、CDSセルに以下のような回路を追加すれば、抵抗値を電圧値に変換することができます。
デバイスープロセッサ
マイコンボード | シングルボードコンピュータ | スマートフォン | |
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性能 | 低 | 中 | 高 |
消費電力 | 低 | 中 | 高 |
コスト | 1000円〜数千円程度 | 1000円〜数千円程度 | 中古や旧型なら非常に安いものもある |
特徴 | 比較的低性能 汎用的なコンピュータがワンチップ化されたもの 応答性が高い 最近、プログラム開発環境が非常に簡単になってきた | 性能の低いパソコンのようなイメージ(ディスプレイやキーボードをつなぐとパソコンのように使える) パソコン用プログラムを開発しているような人には非常に扱いやすい 起動に時間がかかる | 多数のセンサが内蔵されている 外付け部品をつなぐのは難しい スマホアプリ開発者には扱いやすい |
例 | Arduino(2005年〜) *Arduino準拠のマイコンボードが多数あり micro:bit(2015年〜) | Raspberry Pi(2011年〜) *性能等に応じて多数のモデルあり | iPhone(2007年〜) |
本質的には、IoT(見える化)には「マイコンボード」が適しています(低電力、応答性が高い、低価格など)。
ただし、実際には、それぞれの開発者の事情(社内で使用経験がある、指導してくれる人がいる、開発パートナーの都合など)でプロセッサを選択していると思われます。
また、実際にデバイスを選択する際には、具体的な使い方(外付け部品とのアナログ接続端子数、Wi-Fi, Bluetooth通信機能の有無、使用するセンサとの相性など)に基づいて検討することになります。
ネットワーク
有線 | 無線 | |
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例 | 有線LAN など | Wi-Fi, Bluetooth, 携帯電話網 など |
コスト | 高い | 安い |
特徴 | 信頼性が高い 敷設や管理が非常に大変 | 容易に使用可能 電波状態によっては安定して通信できない データ漏洩の危険性もあり |
当然、有線の方が信頼性が高くなりますが、コストも高くなります。
IoTの「見える化」などの用途では、通信断などが致命的とはならないケースも多いため、そのような場合は「無線」で安価にネットワークを構成するのが適しています。
また、無線ネットワークには、汎用的に広く使われている無線規格と、IoT向けに最適化された無線規格(LPWA)が存在します。
一般的な無線規格 | IoT向けの無線規格(LPWA) | |
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例 | Wi-Fi, Bluetooth, 携帯電話網 など | SIGFOX, LoRa など |
コスト | 安い | 運用費用は非常に安い 導入費用は? |
特徴 | 広く使われており、既存の設備を使用可能 | 低電力、長距離通信 低速なため低価格 電源のない場所(低電力)や、広いエリア(農場など)での運用に適している 一般的ではないため、導入のハードルは高い |
IoT向け無線規格(LPWA)は低電力、長距離通信を特徴としており、圃場など、電源のない場所や広いエリアでの運用に適しています。
一方、工場内など、電源の確保が容易な限られたエリアであれば、一般的な無線規格の活用が適しています。
特に、既に工場内にWi-Fi環境が整備されているような状況であれば、既存のWi-Fi環境を利用することができます。
サーバ
自社サーバ | 共有サーバ(レンタルサーバ) | クラウドサービス | |
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例 | Amazon Web Service Google Cloud Platform Microsoft Azure など | ||
コスト | 非常に高い | 普通 | 一般的な用途では安い(従量制課金) |
特徴 | 自由度が高い サーバ管理の負荷が非常に高い データの安全性が高い(外部と遮断されている場合) | サーバ管理は不要だが、データ管理は必要 データ蓄積・表示の仕組み(プログラム)を開発する必要がある | AmazonやGoogleのクラウドが利用可能 常に最新でメンテナンスが不要 開発できるベンダやエンジニアが多い サービス継続が他社に委ねられている |
2021年9月に「Amazon Web Service(AWS)」のシステム障害が発生し、大きなニュースになりました。
この時のニュース記事によれば、AWSのシステム障害により、以下のような多くの企業のWebサービスに影響が出たとのことです。
- 三菱UFJ銀行のスマホアプリ
- みずほ銀行のネットバンキングアプリ
- SBI証券などのサイト
- au PAY
- 全日空のチェックインシステム
- 日本航空の貨物情報システム
これを見ると、金融機関や航空会社の、非常に重要なWebサービスにおいてもAWSが使われていることが分かります。
このように、現在では非常に幅広い分野でクラウドサービスが広く使われており、そういう面では安心して自社システムにも利用できると考えられます。
なお、クラウドサービスの中では「AWS」 がデファクトスタンダードとなっています。
次項は こちら。
目次は こちら。