町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。
今回は、日本酒の「もろみ発酵」の温度管理を行う仕組みを、支援機関と共同で開発した事例を紹介します。
日本酒のもろみ発酵の温度管理にIoTを活用
背景
秋田県にある秋田酒類製造は、従業員数125名の企業で、秋田を代表する銘酒「高清水」を生産しています。
日本酒は、米に麹を加えてデンプンを糖に変え、その糖を、酵母を使ってアルコール発酵させることで醸造されます。ここで、時間の経過とともに進んでいく発酵の状態を見極めることが、日本酒の品質を大きく左右します。
同社では、経験豊富な杜氏や蔵人が、3週間から1カ月の間、休日や深夜早朝を問わず、日々刻々と変わるもろみの発酵工程を見ることで、品質を維持してきました。
しかし、ここ数年、杜氏・蔵人の高齢化が進み、担い手不足が課題になりつつあります。そのため、杜氏や蔵人の技能を可視化し継承しやすくすることが喫緊の課題となっていました。
こうした中、県内のものづくり企業に対して技術ソリューションを提供している「秋田県産業技術センター」から、酒造りの現場にIoTを導入し、業務の効率化や製品品質の向上に役立てられないか?という提案がありました。
これがきっかけとなり、同社と秋田県産業技術センターがタッグを組み、ここ数年の課題であったもろみ発酵の温度管理をIoT化することになりました。
取り組み内容
具体的には、米、麹、仕込水と酵母を混合した「酒母」のタンク内15箇所に温度センサを配置しました。温度データは、安価なマイコンボード「Arduino Uno」で収集し、サーバに送信して蓄積する仕組みを構築しました。
このIoTデバイスは、実証実験後に本番で使用することを考慮し、低コストで安定稼働することを第一に開発されました。
効果
2019年1月に実施した実証実験では、酒母タンク内のリアルタイムな温度監視、およびサーバに蓄積したデータ分析の有効性を確認できました。実証実験は2019年度も引き続き行われることが決まっており、次年度には温度異常時の通知機能を実装する計画となっています。
情報通信技術と無縁の同社にとって、IoT技術が業務改善や品質向上に活用できるということは、とても知り得ないことでした。しかし、支援機関から提案を受け、タッグを組んで取り組むことで、業務を効率化し、担い手不足の問題を解決するための道筋をつけることができました。
ポイント
- 支援機関とタッグを組んで取り組みを行った点
- 目的を明確化して取り組んだ点
味噌や米麹などの発酵食品づくりは、一般の人の趣味としても人気です。
温度センサと「Arduino Uno」を使ったIoTデバイスは非常に安価に作れますので、同様の仕組みは、企業だけでなく、趣味での発酵食品づくりにも適用できるかもしれません。
当社の「自分でIoT」パッケージは、IoTデバイスの設計図、サンプルプログラム、技術アドバイスをセットにしたサービスです。お客さまご自身でのIoTシステム開発をサポートします。
IoTシステムの導入を検討されている方は、外部からの購入だけでなく、自社で開発することも検討してみてはいかがでしょうか?
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(出典)
- さくらインターネット「IoT | 導入事例」