中小製造業のIoT事例 27 〜装置の遠隔監視用IoTシステムを自社開発

町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。

今回は、自社が製造・販売したパワーエレクトロニクス装置を遠隔監視するために、IoTシステムを自社開発した事例を紹介します。


パワーエレクトロニクス装置の遠隔監視用IoTシステムを自社開発

背景

兵庫県に本社がある株式会社指月電機製作所は、従業員数1400名の企業で、フィルムコンデンサや電力機器システムを製造しています。

このうち電力機器システムについて、装置の運転データを取得するためには、作業員が装置の設置場所まで赴き、装置を一旦停止させる必要がありました。
運転データ取得には多くの時間と経費がかかるため、データ取得は特別なこととなってしまい、異常時のデータ取得が主になっていました。
平常時のデータ取得はまれであり、そのため平常時に顧客がどのように装置を運転しているか、把握できていませんでした。

このため、装置情報に常時アクセスし、平常時・異常時に関わらずデータを取得したいというニーズがありました。

取り組み内容

開発したIoTシステムの構成は以下のとおりです。

装置には、新たに市販のIoTゲートウェイを搭載しました。
装置ーゲートウェイ間はシリアル通信、ゲートウェイークラウド間はLTEで通信することにより、遠隔地よりリアルタイムで、運転データにアクセスできるようになりました。

効果

遠隔地から、装置情報をリアルタイムでモニタリングできるようになりました。
これにより、データ取得のために作業員が現場に赴く必要がなくなり、作業効率が改善し、60%の費用削減が可能となりました。

また、IoTシステムを自社開発したことで、これまで自社では保有していなかったWebアプリケーションの開発技術を獲得できました。

ポイント

  • 自社の課題を的確に洗い出し、対策を具体化した点
  • IoTシステムを自社開発することで、これまで自社で保有していなかった技術を獲得できた点

IoTシステムの導入にあたり、「ゲートウェイは市販品を採用」「Webアプリケーションは自社開発」と切り分けることにより、IoTシステムを実際に構築できただけでなく、新規技術を獲得することもできました。

このように、自社で主体的にIoT導入の取り組みを行うことにより、新たな技術を獲得することも期待できます。

(出典)

  • 公益財団法人 新産業創造研究機構(NIRO)IoT・AI・ロボット活用事例