中小製造業のIoT事例 7 〜使いやすい仕組みで「安全・安心」に貢献

町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。

今回は、製造業の事例ではありませんが、高齢者の見守りのために、IoTを用いて、使いやすい仕組みを構築した企業の取り組みを紹介します。


IoTを使って社会の「安全・安心」に貢献

背景

東京都に本社がある綜合警備保障(ALSOK)では、セキュリティ事業をおこなっています。

同社は、セキュリティ事業を展開する企業として、高齢化にともなって増加する「認知症患者の行方不明」に対策を講じ、社会の「安全・安心」に貢献したいと考えました。

取り組み内容

具体的には、BLE(Bluetooth Low Energy)技術を使った位置測定システム「みまもりタグ」を開発し、それを高齢者の靴に取り付けられるようにしました。

位置情報を測定するためには、普通はGPSを使います。しかし「頻繁に充電するのは面倒」、「端末が大きいと持ちあるきにくい」などの利用者の声をふまえて、「みまもりタグ」にはBLEを採用しました。
これにより、電池交換は1年間不要になり、端末を靴に取り付けることもできるようになりました。
徘徊する高齢者には靴をはく習性があることから、意識して端末を持たなくても、居場所を特定できるようになります。

ただし、BLEは通信距離が短く、位置情報を発信することもできません。
このため、保護者やボランティアの方のスマホに、この端末と通信するアプリを入れ、スマホとの通信履歴から、端末の位置を推定する仕組みを採用しました。

このように、本事例は「普段は高齢者は保護者の近くにいる」、「徘徊時には関係者が捜索する」という特定の状況を前提として、用途を限定した位置測定システムを実現しています。

効果

この仕組みは、厚生労働省、国土交通省の事業にも採択され、17の自治体で導入されています。

従来、徘徊高齢者は、大人数で捜索する必要がありましたが、この仕組みを使うことで、少人数かつ早期に発見できる事例が増えてきています。

ポイント

  • ユーザ視点に立って、使いやすい仕組みを作り上げた点。
  • 想定される利用状況を踏まえ、無駄のない最適な仕組みを採用した点。

IoTと聞くと、とてつもなく大規模なシステムを想像してしまいがちですが、この事例と同様に、自社の問題点や、IoTでどんなことができたら嬉しいかを吟味し、それを元に、どんな技術を使って、どんな仕組みを作ればよいかを考えていけば、ムダのない、使いやすいIoTシステムが構築できると思います。

ちなみに、当社の簡易IoTシステムでは、装置の稼働状況を簡単に取得できるので、見える化を実現し「IoTが何たるか」を実感するのにオススメです。

当社の簡易IoTシステムは導入も非常に簡単なので、まずは一度導入してみて、IoTの本質や有効性を理解した上で、業務改善の取り組みを、より深く進めていくのも良いのではないでしょうか?
(簡易IoTシステムについては こちら へ)

 

(出典)

  • 財務省 関東財務局「先端技術の活用等を通じた生産性向上事例集」