中小製造業のIoT事例 8 〜設備更新にあわせて自らの創意工夫でIoT化

町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。

今回は、ITに詳しい社員が、自社ニーズにマッチしたシステムをオリジナルで開発した事例を紹介します。


設備更新にあわせて、自らの創意工夫でIoT化

背景

埼玉県にある長島鋳物株式会社は、従業員数130名の企業で、上下水道用マンホール蓋の製造・販売をおこなっています。

マンホールの蓋は一品ずつ仕様が異なるため、多品種少量生産をおこなう必要があります。そのため、納期と品質を持続的に担保するためには、熟練作業者の経験知やノウハウが不可欠であり、その経験知やノウハウをどのように継承していくかが課題になっていました。

また、マンホール蓋の製造には、多種類の金型が必要なため、人手によるそれらの管理作業が複雑になり、費用と労力がかかることも課題でした。

取り組み内容

同社には、電気関係の資格を持つ社員、過去にIT企業に在籍していた社員など、社内にIT/IoTに精通した人材がいました。
そのため、現場社員に丁寧なヒヤリングをおこない、必要な機能を絞り込むことで、シンプルで使いやすいIoTの仕組みを自社開発することにしました。

具体的には、シーケンサー等から取得できる各生産設備の動作データなどを、注文情報などと紐付けることで、情報を一元管理する仕組みを開発しました。
これにより、モバイル端末や大型ディスプレイで、稼働状況などをリアルタイムに把握可能になった他、それまでは人力でおこなっていた、システムへの各種入力作業を自動化することもできました。

また、生産設備を更新するタイミングと併せて、製造現場のIoT化を実現しました。具体的には、電気炉にセンサを設置し、温度や重量等のデータを取得・管理するのと同時に、最適な湯が自動で注湯される仕組みを構築しました。

効果

この取り組みにより、注文から製造がダイレクトにつながるようになり、さまざまな工程でタイムロスや作業負荷を減らすことができました。
例えば、従来は、作業員が生産数などの情報を現場で紙に記録しておき、作業終了後、残業してPC等にデータ入力していましたが、それらの作業が自動化されて、労務環境が大きく改善されました。

また、これまで人手で行っていた電気炉の温度計測は、危険な作業であるため、頻繁に計測することができませんでしたが、IoTでリアルタイムの温度監視ができるようになったことで、状況を踏まえた細かな設定ができるようになりました。
さらに、蓄積したデータを分析することで、熟練作業者の経験知をデータから導くこともできるようになりました。

ポイント

  • ITに詳しい社員が、自社ニーズにマッチしたシステムをオリジナルで開発した点。
  • 設備の更新に併せて、システムやセンサなどを組み合わせて、鋳造ラインを自動化した点。

本事例は、IoTで何をしたいのか?という目的を明確化することができ、それを実現する技術力があれば、最小限のコストで大きな効果を得ることができる、ということを示しています。

当社の簡易IoTシステムは、表示灯などから間接的に稼働情報を取得しているため、本事例のような詳細な情報は取得できませんが、稼働時間などの基本的な情報は、非常に簡単に取得できます。

当社の簡易IoTシステムは導入も非常に簡単なので、まずは一度導入してみて、IoTの本質や有効性を理解した上で、業務改善の取り組みを、より深く進めていくのも良いのではないでしょうか?
(簡易IoTシステムについては こちら へ)

 

(出典)

  • 経済産業省 関東経済産業局「中小ものづくり企業IoT等活用事例集」