古くなったNi-MH電池の低温時の電圧特性

屋外(畑)にESP32でつくったIoTデバイスを設置しているのですが、動作がやや不安定です。
具体的には夜間、特に深夜から明け方にかけてデータが取得できなくなるという現象なのですが、毎日必ず取得できなくなる訳ではなく、日によっては全く問題なく取得できることもあります。

いろいろ状況を調べたところ、気温が氷点下あたりまで下がった時にデータが取得できなくなっているようです。自宅に持ち帰って確認したところ、自宅でも、室温では問題なく動作し、デバイスを冷凍庫に入れるとデータ取得できなくなるという現象が再現できました。

畑に設置している同等のデバイスでは、気温が低い時でも問題なくデータ取得できていることから、デバイスの個体差によるものではないかと考えました。そのため、今回問題となったデバイスと同一仕様のデバイスをもう1台製作し、比較のために両者に新品の電池を取り付け、あらためて冷凍庫に入れて調査を開始しました。
すると今度は、新たにつくったデバイスはもちろん、問題となっていたデバイスまで正常に動作するようになってしまいました。

問題となっていたデバイスについての変更点は、電池を新品に取り替えただけです。つまりデバイス自体が悪かった訳ではなく、電池の問題だったようです。

そのため、使用していた電池について調査することにしました。

問題となったデバイスで使用していたのは、Amazon Basicの単四型Ni-MH電池です。


かなり古いもので、もちろん充電回数などは分かりませんが、購入してから7年近く経っているものです(現在販売されているものは本体が緑色ですが、当時のものは本体が黒です)。

「買い替え目安診断機能」の付いている充電器(パナソニックBQ-CC85)で正常に充電できていることから、まだ問題なく使えると考えていましたが、普通に考えると、もう寿命に近いか、もしかしたらとっくに寿命を過ぎているのかもしれません。


この電池4本でM5Stamp Picoに電源供給し、M5Stamp PicoでLチカ動作をさせた時の電池電圧の推移を調査することにしました。比較のため、新品のNi-MH電池でも同じ調査を行います。

まずは室内(常温)で調査しました。古い電池の方がやや動作期間が短かったものの、電圧の推移に大きな違いはありませんでした。どちらも4.8V〜5.2Vの電圧を長時間にわたって維持し、丸1日以上動作しました。同時に測定したM5Stamp Picoの消費電流値は30mA程度であり、電池容量(750mAh〜800mAh)から考えても電池の性能どおりの結果となりました(800mAh / 30mA = 26.7h)。

次に同じものを冷凍庫に入れて低温時の調査を行いました。すると、新しい電池については常温時と大きく変わらない結果になったのに対し、古い電池については常温時と大きく異なる結果になりました。
具体的には電池の電圧が4.5V程度まで下がってしまい、動作期間もやや短くなりました。

常温時と低温時の電圧推移をグラフ化してみました。古い電池では低温時の電圧低下が大きいことがよく分かります。
Ni-MH電池が劣化することにより、特に低温時の特性の悪化が顕著になることが確認できました。

畑に設置していたIoTデバイスでは、この電池3本を5V電源端子につないで動作させていました。またWi-Fi通信などの処理を行うので、消費電力もLチカより大きくなっています。
このため、気温が高いときには4V近くある電池電圧が、氷点下になると3V程度まで低下してしまい、それによりデバイスが停止してしまっていたようです。

このデバイスは、電池を新しいものに交換して畑に再設置しましたが、これまでのところ、低温時も全く問題なく動作しています。