知り合いに、無農薬でコメをつくっている方がおられます。
その方に話を聞いたところ、無農薬のコメづくりで最も大変なのは、田植え後1ヶ月ぐらいの間の草取りだそうです。
田植えをしたばかりの、まだイネが小さい時期に草取りをしないと、イネと雑草とで栄養の取り合いになってしまい、その結果、イネの生育が悪くなってしまうのだそうです。
対策のひとつとして「アイガモ農法」があります。
田んぼにアイガモを放し、
- アイガモが泳ぐことで水を濁らせ、その下から生えてくる雑草に光合成をさせない環境を作る
- アイガモが生えてきた雑草を食べる
ことにより、農薬を使わずに除草する取り組みです。
実際にアイガモが雑草を食べなくても、水をバチャバチャとかき混ぜるだけで雑草対策になるという点がポイントです。
一方、アイガモ農法においては、「アイガモの外敵の侵入防止に電柵や防鳥糸などの設置が必要」「アイガモが成長するとイネを食べてしまったりする」など、いくつかの課題もあります。もちろんアイガモを飼育すること自体も大変です。
私が電子工作などをしていることを知ると、知り合いの方からは「アイガモの代わりに、田んぼの中を勝手に走り回る《ルンバ》みたいなものはつくれないの?」と聞かれました。
インターネットで調べてみると、「アイガモロボット」というものがいくつかの団体で開発されているようです。
ただ、いずれもかなりしっかりしたもので、価格的にも数十万円はするようです。
実用的なアイガモロボットをつくるのは、技術的にも費用面でもなかなか難しいものがあり、知り合いの方のように、自分で食べるためのコメをつくっているような小規模農家には、とても導入できなさそうです。
実は、知り合いの方からこの話を聞いたのは、1年半も前のことです。
その時、おもちゃレベルのものなら何とかつくれる可能性があるのではないかと考え、タミヤの「水中モーター」を使って、このような 水上ロボットをつくっていました。
お風呂に浮かせて、親機のマイクロビットで操作して、水上を走らせています。
一方、今年は、家庭菜園をしている畑の端に「ミニ田んぼ」をつくっています。
ミニ田んぼにまだイネが植えられておらず、なおかつ水が張られているのは今の時期だけなので、以前つくったこの水上ロボットが、ミニ田んぼで実際に走行可能か、一度確認してみることにしました。
実は、この水上ロボットを作った当時、私は田んぼというものは浅いプールのようなものだと思っていました。
しかし、実際には、田んぼの水深は数センチしかありません。
この水上ロボットでは、ケースの底面に水中モーターを取り付けており、また、ケースも半分ぐらいは水中に沈んでしまうため、これでは間違いなく、モーターが田んぼの底に引っかかってしまいます。
ただ、試す前から諦めるのも何なので、動かないのは覚悟の上で、ミニ田んぼに持っていって試してみました。
結果はこちらです。
田んぼの水深が全体的に浅く、やはりすぐに引っかかってしまいます。
また、タミヤの「水中モーター」の回転程度では、水を濁らせることはできませんでした。
加えて、実験後に水中モーターを確認いたところ、モーターには大量のゴミが巻きついていました。
まとめると以下のとおりです。
- 水中モーターの位置が低いため、モーターが田んぼの底に引っかかる。
- 水上ロボットを走らせても、水が濁らない。
- スクリューに大量のゴミが絡みつく。
水上ロボットを田んぼで走らせるためには、これらについて対策を施さなければなりません。
これらの問題点を改善し、田んぼでもきちんと走る駆動部をつくることができれば、センサーなどを搭載してロボットを自走させることもできるようになるかもしれません。
追記
前述の問題点に対処するために、以下を実施してみました。
- 水中モーターが田んぼの底に引っかかってしまう問題に対処するため、モーターの取付箇所を「ケース底面」から「ケース側面」に変更する。
- 水を濁らせるために、船から何らかの部材を田んぼの底まで垂らし、それを引っ張る方式にする(今回は数十個のクリップを結束バンドでぶら下げてみます)。
- スクリューにゴミが絡みつく問題に対処するため、スクリューにネットを被せる。
再度、ミニ田んぼに持っていって試しました。
実験の結果、モーターの取り付け箇所をケース側面に変更し、スクリューの一部が水上に出てしまうだけで、全く進まなくなってしまいました。
また、スクリューの位置を元に戻しても、「ボートからクリップを垂らす」「スクリューにネットを被せる」のいずれかの対策を実施しただけで、その分抵抗が増えてしまうためか全く進みませんでした。
元々の状態で、最低限の推進力しかなく、少しでも抵抗が増えると動かなくなってしまうようです。
このやり方をベースにする限り、田んぼで動かすのはなかなか難しそうです。
田んぼは水深が浅いことが分かったので、どちらかというと「ボート型」より「オフロードカー」のような形状にした方が、防水対策も簡単で、より自在に動くものがつくれそうです。