中小製造業のIoT事例 2 〜IoTゴミ箱

町工場にIoTを導入したいけど、そもそもIoTで何ができるのか、IoT導入のために何をしたらいいのかわからない、という方も多いと思います。
このブログでは、そのような方に向けて、さまざまな分野から、IoT導入事例をいくつかピックアップして、紹介していこうと思います。

今回は、サンフランシスコ市のゴミ排出量削減に向けた取り組みを紹介します。


IoTがサンフランシスコの廃棄物問題を解決する

背景

サンフランシスコは、環境問題に敏感な都市として世界的に知られています。2003年には「2020年までに埋め立てゴミを無くし、100%をリサイクルし堆肥化する」という「ゼロ・ウェイスト」目標を設定し、着々とその計画を進めてきました。

しかし、市のさまざまな取り組みにも関わらず、肝心の埋め立てゴミは期待されていたほど減少していません。その背景には、サンフランシスコ市民の排出する廃棄物がなかなか減らないという問題があります。
つまり、埋め立てゴミをゼロに近づけるためには、消費者の意識を変える必要があり、そのためには教育と普及活動が重要であると考えられています。

取り組み内容

このためサンフランシスコでは、新しい技術を駆使して市民の意識を高めようとしており、そのためには、IoTが持つデータ測定や分析技術が役に立つと考えています。

具体的には、市内のゴミ箱にセンサーを装備しています。ちなみにこの技術は、サンフランシスコのスタートアップ企業が開発したものです。

これらのゴミ箱は、1日に複数回、内部を高解像度で撮影し、クラウドに送信します。ゴミ回収業者は、ゴミ箱の容量を監視し、トラックのルートやスケジュールを最適化することが可能になります。また、ゴミの内容の画像分析により、リサイクル不可能なゴミの割合を見積もることもできます。

この技術は、レストランなどにも適用できます。食品と廃棄量の関係を分析することで、レストランは在庫を管理し、コストを削減することが可能です。例えば、朝食ビュッフェを提供するホテルでは、フルーツサラダがどれくらい食べられており、どれくらい無駄になっているかを見積もることができ、フルーツの購入量を減らすことができます。

市民は食料品の買い物を最適化し、廃棄物の発生を減らしてお金を節約することが可能になります。一方、企業はデータ分析を活用してリサイクルと堆肥化を改善し、ゴミの回収コストを削減することができるのです。

効果

サンフランシスコのテクノロジーを駆使した環境への取り組みは、すでに多方面にわたっており、最後の廃棄物20%の埋め立てからの転用に向けて山場を迎えています。

このように、埋め立てゴミを減らすには行政側の一方的な努力だけでなく、消費者や企業の意識を変えることも重要です。上記のIoT技術は、廃棄物問題を解決する一つの手段として、消費者や企業の意識変革に役立つと考えられています。

ポイント

この取り組みの、ゴミ回収業者から見たポイントは、ゴミ箱のIoT化により、ゴミ回収という仕事の働き方が変わったことです。
定期的に回収するという、これまでは当たり前だった働き方が、IoT化により、必要な時だけ回収できるようになり、大幅な業務効率化が実現できています。

これはさまざまな業種にも適用可能で、例えば同じようなIoTシステムで、材料を入れたハコを監視するようにすれば、在庫確認の作業を定期的に行う必要がなくなり、材料が減った時に自動的に知らせてもらえるようになります。画像分析をせず、ただ単に重さを管理するだけでよければ、システムはさらに簡単なものにできます。

このように、IoTへの取り組みにおいては、これまで当たり前だと思っていたことが、IoTによって変えられることに気づけるかどうかが鍵になります。

 

(出典)

  • Nissho Electronics USA Corporationブログ