「IoT実証実験用フィールド」で稼働中のデバイス

近くの里山地域に畑を借り、そこで野菜を育てながら、屋外でのIoT実証実験を行っています。

先日、この実証実験を行うエリア(以降は「IoT実証実験用フィールド」と呼びます)を拡張しました(記事は こちら)。
この機会に、「IoT実証実験用フィールド」で稼働中のデバイスについて、改めてまとめておきたいと思います。

Wi-Fiルータ・中継機

A.Wi-Fiルータ1

各種IoTデバイスやカメラデバイスで採取したデータをWebサーバに送信するために、畑にモバイルWi-Fiルータを設置しています。

使っているルータは「HUAWEI E5785」です。


「50Wソーラーパネル」「20Ahディープサイクルバッテリー」「チャージコントローラ」で「ソーラー発電システム」をつくり、それで電源供給しています。
使用しているのは、カウスメディアの「50Wソーラー発電 20Ahディープサイクルバッテリーセット」です。


設置したのは2020年9月で、既に2年近く経過しています。
ルータは常時稼働させており、常に160mA@5V程度の電流を消費しているようですが、全く問題なく稼働しています(詳しくは こちら)。

B.Wi-Fiルータ2

「IoT実証実験用フィールド」を拡張したので、そちらにもモバイルWi-Fiルータを設置しました。
使っているルータは、同じく「HUAWEI E5785」です。

こちらは、より小さなソーラーパネルで、ルータを常時稼働させることができるかどうかの実験のために設置しています。
「10Wソーラーパネル」「9Ahディープサイクルバッテリー」「チャージコントローラ」で「ソーラー発電システム」をつくっています。
カウスメディアの「5Wソーラー発電蓄電 電気柵用セット」を使い、ソーラーパネルのみを、同じくカウスメディアの「10W単結晶ソーラーパネル」に交換しています。



机上計算した限りでは、発電能力には全く余裕はありませんが、ルータ1台(常時160mA@5V程度の電流消費)のみであれば、何とか常時稼働できるのではないかと期待しています。
こちらを設置したのは2022年5月で、まだ1ヶ月程度しか経っていません。
今のところは問題なく稼働していますが、今後も継続して様子を見ていきたいと思います(詳しくは こちら)。

C.Wi-Fi中継機

気象条件や畑の状況によっては、Wi-Fiの電波強度が弱くなり、「IoT実証実験用フィールド」の端の方からは、モバイルWI-Fiルータまで電波が届かなくなります。
そのため、より安定してデータ送信する目的で、Wi-Fi中継機を設置しています。

この中継機は「ESP32-DevKitC」でつくっています(詳しくは こちら)。



こちらは「12Wソーラーパネル」「7.2Ahディープサイクルバッテリー」「チャージコントローラ」で「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しています。
ソーラーパネルとバッテリーは秋月電子で購入したもの、チャージコントローラはアマゾンで購入したものを使っています(詳しくは こちら)。


この中継機は、常時130mA@5V程度の電流を消費しています。
設置したのは2021年8月で、1年近く経過しました。
1度だけ、パネルの周りに背の高い雑草がたくさん茂ってしまい、それにより十分に発電できなくなり、稼働停止してしまったことがありましたが、それ以外は快調に稼働しています。
やはり、フィールドでのIoT適用においては、システム周りの整備(草刈り)など、定期的なメンテナンスが必要です。

センサデバイス

D.環境情報センサ

ひとつのデバイスで、畑の気温、湿度、土壌水分量を測定しています。
元々は土中温度も測定していましたが、センサが壊れてしまい、現在は測定できていません。
10分毎に上記のデータを測定し、Webサーバに送信しています(詳しくは こちら)。

デバイスは「M5Stamp Pico」、センサは「ENV IIユニット」「防水型温度センサ(DS18B20)」「静電容量型土壌水分センサ」を使っています。







「2Wソーラーパネル」「単三型ニッケル水素電池4本」「ダイオード」でシンプルな「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しています。
ソーラーパネルは、秋月電子で購入した「2W太陽電池モジュール(M-08919)」を使っています。
パネルは1枚数百円、電池も4本1000円程度で購入できるので、とても安価にシステムをつくることができました。

こちらは2021年10月に設置しました。
既に8ヶ月が経過しましたが、全く問題なく稼働しています。
デバイスの周りに雑草が茂ったり、パネルが非常に汚れたりしています。今のところはまだ大丈夫ですが、近いうちに掃除する必要がありそうです。

E.水位センサ

たんぼの水位を10分毎に測定し、Webサーバに送信しています(詳しくは こちら)。

デバイスは「Timer Camera」を使っています。「Timer Camera」はカメラデバイスですが、ここではカメラ機能は使わず、単なるIoTデバイスとして利用しています。
また、センサは「静電容量型土壌水分センサ」を使っています。こちらは本来、土中の水分量を測定するためのものですが、それを水位センサとして流用しています。


「単三型ニッケル水素電池4本」で電源供給しています。ソーラーパネルなどは使っていません。
机上計算では、電池のみで4ヶ月稼働できる見込みです。たんぼの水管理が必要なくなる時期(秋)まで、電池交換せずに稼働できることを期待しています。
設置したのは2022年5月で、1ヶ月近くが経過しました。
これまでのところ、全く問題なく稼働しています。

カメラデバイス

「IoT実証実験用フィールド」には数台の「カメラデバイス」を設置しています。
いずれも、10分に1枚の間隔で畑の風景を撮影し、その画像データをWebサーバに送信しています。

F.カメラ1

「M5Camera」を使っています。
LEDライトなども取り付けてあり、撮影時にライトを点灯させることができるようにしてありますが、現在は動作させていません。

電源は「A.Wi-Fiルータ1」用の「ソーラー発電システム」から供給しています。

こちらは「A.Wi-Fiルータ1」と同時(2020年9月)に設置しました。
既に2年近く経過しています。途中でプログラムを更新したりはしていますが、現在まで特に問題もなく稼働しています(詳しくは こちら や こちら)。

G.カメラ2

「Timer Camera」を使っています。

「2Wソーラーパネル2枚」「単三型ニッケル水素電池4本」「ダイオード」で「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しています。
ソーラーパネルは、「D.環境情報センサ」と同じく、秋月電子で購入した「2W太陽電池モジュール(M-08919)」を使っています(詳しくは こちら)。

なお、これをつくった当初は、カメラデバイスとして「M5Camera」を使っており、このソーラーシステムの構成で、何とかギリギリ「M5Camera」の消費電力を賄えるという見積りでした。
また、「Timer Camera」は「M5Camera」よりも更に消費電力が大きく、このソーラーシステムで稼働することはできませんでした。

しかし、その後「Timer Camera」を低電力化する方法を見つけ、このシステムで使用するカメラデバイスを「Timer Camera」に変更しました。
「Timer Camera」を大幅に低電力化できたので、今となっては、このソーラーシステムの構成は、ややオーバースペックになっています。

設置したのは2021年9月です。その当時は「M5Camera」を使っていました。
2022年2月に「Timer Camera」に変更しました。電源供給能力の面では特に問題はありませんでしたが、気温が低い時にデータ送信できないという問題が頻発していました。
その後、2022年5月に「Timer Camera」への電源供給方法を変更しました。これにより低温時にデータ送信できない問題は解消する見込みのため、今後も継続して調査しようと考えています。

H.カメラ3

「Unit Cam Wi-Fiカメラ」を使っています。

「0.3Wソーラーパネル」「単四型ニッケル水素電池3本」「ダイオード」で「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しています。
ソーラーパネルは、秋月電子で購入した「携帯機器用ソーラーモジュール300mW(M-16017)」を使っています。

設置したのは2022年3月です。
こちらは安定して稼働しておらず、1ヶ月に1回ぐらいの頻度で電池が空になり、停止してしまいます。ソーラーパネルの発電能力が足りないようです。
自宅で実験していた時には快調に動いていたのですが、畑ではWi-Fiデータ送信に時間がかかっており、それに伴い電流消費で増大してしまっているようです。
また、電池3本(3.6V)と供給電圧が低いため、電池容量が減ってきた時に急激に動作が不安定になります。

一応動いているので設置し続けていますが、今後この構成のシステムはつくらないつもりです。
「Unit Cam Wi-Fiカメラ」自体もいろいろ扱いづらいところがあるので、「Timer Camera」の方がいいかな?と考えています(詳しくは こちら)。

I.カメラ4

「Timer Camera」を使っています。

「0.5Wソーラーパネル」「単四型ニッケル水素電池4本」「ダイオード」で「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しています。
ソーラーパネルは、SeeedStudioの「0.5W Solar Panel 55×70」を使っています。
スリムな防水ケースにスッキリ収まっています(詳しくは こちら)。


設置したのは2022年5月です。
まだ設置して1ヶ月ですが、これまでのところ快調に稼働しています。
画像データと同時に、内蔵バッテリー電圧も測定してWebサーバに送信するようにしていますが、バッテリー電圧も全く下がっておらず順調です。
「IoT実証実験用フィールド」に設置するカメラデバイスとしては、今後はこの構成を本命にしようと考えており、今後も継続して様子をみていこうと思っています。

J.カメラ5

「I.カメラ4」と同一構成です。

「I.カメラ4」ではカメラデバイスとして「Timer Camera F」を使っているのに対し、こちらは「Timer Camera X」を使っています。
カメラデバイスが薄くなったため、よりコンパクトなケースに収めることができました。

こちらも2022年5月に設置しており、これまでのところ全く問題なく稼働しています。

K.カメラ6

こちらも「I.カメラ4」と同一構成です。
長期間設置するつもりはないので、余っていた防水ケースを使って簡易的につくりました。

こちらも2022年5月に設置しており、これまでのところ問題なく稼働しています。
このカメラシステムの構成で安定稼働できることを確認するため、今後数ヶ月は設置し続け、稼働状況を確認しようと考えています。

過去に設置したデバイス

水温センサ

「Timer Camera F」に4つの「防水型温度センサ(DS18B20)」をつなぎ、気温および3ヶ所の水温を測定し、Webサーバに送信しました。


外付けの電源は使わず、「Timer Camera F」に内蔵されているバッテリーだけを使用しました。
1時間毎にデータ採取させたところ、内蔵バッテリーだけで2021年6月〜8月の70日間にわたり連続稼働できました。

稼働途中で充電したりすることもなく、たんぼに水を張っている期間のほとんどを賄えたことになります(詳しくは こちら)。

獣害検知カメラ

「M5Camera」に「人感センサ」や「リレー」、「赤外線LEDライト」などをつなぎ、獣を検知したときにLEDライトを点灯させて写真を撮影、Webサーバに画像データを送信するというシステムをつくりました。

人感センサは「Panasonic 焦電型赤外線センサ EKMC1601111」、リレーは「M5Stack用ミニリレーユニット」、LEDライトはアマゾンで購入したものを使いました。



このシステムでは、カメラデバイスをディープスリープさせることができないため、消費電力がそれなりに大きくなります。
そのため、「10Wソーラーパネル」「9Ahディープサイクルバッテリー」「チャージコントローラ」で「ソーラー発電システム」をつくり、そこから電源供給しました。

2021年11月〜2022年5月の約半年にわたり設置しました。
低温時(氷点下の時)に画像データが送信されない、春になってからは人感センサの誤検知により獣の写っていない画像が多数アップロードされるなどの問題は発生しましたが、たくさんの獣の写真を撮影することができました(詳しくは こちら)。

土壌水分センサ

「M5Stamp Pico」に「静電容量型土壌水分センサ」をつなぎ、畑の土の土中水分量を測定、Webサーバに送信しました。


「単三型ニッケル水素電池4本」で稼働させました。
15分毎にデータを測定し、2021年10月〜2022年1月の83日間にわたり連続稼働させることができました(詳しくは こちら)。